日本動物実験代替法学会第35回大会
大会長 吉成 浩一
静岡県立大学薬学部 教授
この度、日本動物実験代替法学会第35回大会を、2022年11月18日(金)~20日(日)に、静岡県立大学草薙キャンパスにおいて開催することとなりました。
日本動物実験代替法学会は、動物実験の適切な施行の国際原則である3Rs(Reduction:動物数の削減、Refinement:動物に対する苦痛軽減、Replacement:動物を用いない代替法への置換)の推進と普及を目的とし、研究、開発、教育、調査等を行う学術団体です。この3Rsの原則は、近年の実験動物福祉に関係する各国の法律や指針だけでなく、国際標準や国際指針にも採用されています。他方、EUにおいては2013年に化粧品開発における動物実験が禁止され、2019年には米国環境保護庁も長期的に動物実験を削減することを発表するなど、動物実験代替法の必要性は高まっています。それに伴い、動物実験代替法に関する研究も世界的に盛んになっており、産官学による大型の研究プロジェクトが国内外でいくつも実施されています。そして、これらの大型研究プロジェクトでは、様々な領域の研究者による協働が革新的な技術の開発に繋がっています。このような状況において、3Rsの推進並びに動物実験代替法の開発と普及に本学会が果たす役割は、ますます大きくなると思われます。
本学会は1989年に3Rs研究に携わる研究者の学術交流の場として設立されましたが、本年1月には、本学会を中心として得られた成果等を社会に還元すべく、法人組織としての一般社団法人日本動物実験代替法学会となりました。第35回大会は、法人組織として開催する初めての学術大会となります。そのような背景からも、本学会の活動を、関連する研究分野・業界の方々、行政機関・公的団体、そして社会全体に、広く、積極的にアピールする必要があると感じています。また、関連業界や社会からの声によく耳を傾けて、研究活動や学会活動を推進することも必要です。
皆様もご存知のように、COVID-19の流行に伴い、2020年春以降多くの学術大会がオンライン開催となりました。本学会においても、33回大会(2020年)はオンライン開催、34回大会(2021年)はハイブリッド開催となりました。本稿を執筆している2022年2月では、2021年年末の小康状態からは想像もできないくらいの感染拡大のニュースが流れています。一方で、ウィズコロナ・ポストコロナにおける社会活動の活性化に関する議論も盛んになってきています。オンライン学会では、現地に赴かなくても国内外の様々な学会に参加して情報収集をすることができることから、参加者にとってはメリットも多いことは事実です。一方で、学会の場におけるちょっとした会話が、新たな研究アイディアや共同研究につながることも多く、そのようなコミュニケーションの機会が約2年間も失われていることは、科学界全体にとって大きな損失であると思います。
以上のことを受けて、本大会のテーマを「協働と協調で築く新たな時代の3Rs」とし、完全オンサイトでの開催として本大会の準備を進めています。懇親会も開催予定です。本学会の会員の皆様だけでなく、様々な研究領域の方々にも本大会に参加していただき、積極的に交流を深めていただけばと考えています。皆様のご期待に添える大会とすべく準備を進めて参りますので、多くの皆様にご参加いただければ幸いです。
静岡県は日本一高い富士山と日本一深い駿河湾をはじめとする豊かな風土に恵まれ、農林水産物の宝庫です。学会の合間には静岡の食をぜひお楽しみください。また、本大会が開催される11月には、空気も澄んで天候に恵まれれば会場のキャンパスから冠雪の富士を眺めることもできるかもしれません。皆様に静岡の地でお会いできることを楽しみにしております。
2022年2月吉日